私はときどき、知人が怒るまでもないようなことになぜか激怒して、その怒りがかえって本人を傷つけているように見えることがありました。その様子はあたかも、怒りという生き物が怒る理由を自ら捕まえにいっているようにも思えました。決して他人事ではありません。自分にも同じ反応パターンがあるに違いないのです。他の人々はもちろん自分をも傷つけないためにも、怒りを止めることは絶対に必要なこと、私はやってみようと強く思いました。
 先生からはたびたび「心の反応系を変える」という言葉がダンマトークで聞かれます。すでにいろいろ工夫されている方もおられると思いますが、私なりの怒りを静めるためのやり方です。もし少しでも参考になるようでしたらぜひやってみてください。頭の整理のため箇条書きにしてみます。
 ①まず最初に、怒りは周囲も傷つけるけれど、自分自身も不要に傷つけ、判断を誤らせる有害なエネルギーだということをしっかり理解しておきます。
 ②次に、公憤とか義憤といったものもあります。例えば虐待やいじめで子どもが死亡したり生徒が自殺したりして、児相の不手際や学校の隠蔽体質の情報に触れたときの不快感や怒り、それはまたこちらの正義感の裏返しだとは思いますが、今はそういったことには触れません。今回はあくまで身近の直接的な経験レベルでの話です。
 ③それでもなお怒りを正義や愛情と勘違いすることもありますから、そこは峻別してきちんと客観視するように努めます。特に親子とか夫婦とか身近な人には難しいのですが、「おまえのため」「あなたのため」というのは本当にそうなのか、自身のエゴはゼロなのかを自分に問うてみます。
 ④ここからが本題ですが、直接的な怒りにもいろいろなレベルがあります。言葉でも不快から嫌気、憤り、激怒、あるいは怒髪天を突くなどがありますし、また反対に良い印象にも、「悪くない」から積極的な好意までいろいろあります。
 このような気持ちをできるだけ客観的に観察する方法として数値化してみます。仮称「好意指数」と「怒り指数」という物差しをイメージして、最高の好意を感じたらマイナス(ー)100、ニュートラルの場合は0、これ以上無いほどの怒りを感じたらプラス(+)100というように。
 ⑤先ず第一歩として時間と状況を決めてやってみます。私が実践しているのは、通勤の時に改札の5歩手前から始め、電車を乗り換え、降りて改札を出て5歩進むまで、外界に反応した時に生まれた怒りの数値化です。
 例えば、改札で誰かと接触して+15(以下+記号は略します)、足と足が触れたので35、旅行者のスーツケースが当たって不快70、踵を踏み飛ばされて痛かった80、前に立ったオジサンがマスクもせずに大きいクシャミで不愉快95など。
 それから、老人が杖をついて電車に乗ってきた時に「慈」の心が生まれたのでー20、赤ちゃんの泣き声が聞こえた時には、もし子どもが可愛かったらー40、その泣き声が耳障りに聞こえたら親への怒りで30、オバサンや外国人等の大声での会話がうるさくて63、男子高校生が汗臭くて不快76、などなど。  かなり大雑把ですが、要はその数値自体がどうこうではなく、あくまで上のレベルから見て心の働きを数値化することは、ひいては「好意」や「怒り」を越えて自分の心を客観視する訓練になるのではないかということです。
 付け加えれば、私の場合には「0」の感覚を掴んでそれを覚えておくとけっこううまくいくようです。  ⑥数値化ができたとして、それからは実際どのように「怒り滅尽の境地」を得るかということになります。私はこんなふうに工夫しました。
 ・「今日は通勤の時、事故にあってもテロに巻き込まれても何があっても動揺しない」と決意します。好意指数や怒り指数がいくつであっても、「圧、音、色、当たった」などとラベリングしながら0に戻すように努める。
 ・次に、数値化しなくてもラベリングできるように慣れる。
 ・このようにしていくと、一時的ではあっても心が完全に静まっている状態を知ることができる。  ・そうすると、怒りが生起する瞬間を認識できるようになる。
 ・認識できれば怒りの生起を止められる。
 ・怒りの生起を止められると現象に素早く的確に対応できる。  

 今私が実感しているのは、混んでいる電車で後ろからかなりの圧力で押された時、今まではそこで「何!」となって怒りが起こり、振り返って睨んだり押し返したりという反応が出ていたのが、「(怒り)30」とカウントしたあと「圧」とラベリング出来たら身体から力みが抜けたことです。また、足を踏まれても(カウントを飛び越えて)「当たった」とラベリング。これで痛み自体はあったとしても怒りはスルーして、余計な負担を心に与えることがなくなりました。
 これは怒りだけでなく日常生活全般にも応用できると思います。もし余裕があれば「あなたが幸せでありますように」とメッターを送るのも怒りを打ち消すためにとても良い力になると教わっています。  先生についてヴィパッサナー瞑想を始めて半年です。学力、知識も乏しいので少しずつ勉強していこうと思っています。(完)