●「今月から【初学者でもよくわかる二十四縁起】 モートゥ著 影山幸雄訳】の連載を開始します。

 訳者の影山さんは、グリーンヒルの10日間合宿にも参加されてきた旧来の法友であり、敬虔な仏教徒の瞑想者です。

 専門は泌尿器外科医で

★「解剖を実践に生かす 図解 泌尿器科手術」

★「解剖を実践に生かす図解前立腺全摘術」

 などの著書をお持ちです。


 医療と並行し数多くの仏教書を翻訳されてきました。

★「気づきの瞑想実践ガイド(ブルーマウンテン瞑想センターでの法話集)」

★「脳を鍛えてブッダになる52の方法―ハーバード大学神経心理学者が教えるブッダの智恵をもたらす脳トレーニング」

★「シッダールタ (安らぎと平穏のプリンス)」

 など、ヴィパッサナー瞑想者には垂涎の訳書が多数あります。


 今回の【初学者でもよくわかる二十四縁起】はミャンマー語から影山さんが直接翻訳されたものです。

 本欄の原稿ストックが空っぽになったので、病院長の激務の日々を知りながら敢えてお願いしたところ、心よくお引き受けいただき訳業が完成しました。

 高度な内容ですが、「子供でも分かる二十四縁起」と銘打ってあるだけに、どなたにも解りやすく読んでいただけるものと信じます」(地橋記)

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●【訳者のことば】

 今回の翻訳の原本は10年以上前に在日ミャンマー人向けの説法会で出会った方からお布施としていただいたものです。

 アビダンマ(論蔵)はお釈迦様が天界で神々に向けて説かれた法で、ナーマ(名)とルーパ(色)と言う生命の本質を論理的かつ詳細に説明しています。その中でもパッターナ(発趣論:二十四縁起)は最も重要と考えられており現象の相互関係が余すところなく語られています。アビダンマについての基礎知識がないと理解しにくい面がありますが、この本では難解な専門用語を極力避け、身近な例を用いてわかりやすく説明しています。

 この本のミャンマー語の原題は「未就学児レベルの二十四縁起」となっておりますが、子供を含めた多くの方にお釈迦様の教えを届けたいと言う著者の熱意が伝わってきます。また、この本に目を通すことでアビダンマを本格的に学ぶ際の理解が容易になるだろうと思います。

 ミャンマー語で書かれた仏教文献の中には優れたものがたくさんありますが、日本語に訳されているのは僅かです。この原稿を通じてミャンマー仏教の真髄の一端を皆様に感じ取っていただければ幸いです。


2025年10月31日

影山幸雄



【初学者でもよくわかる二十四縁起】

モートゥ(マンダレー在住)著


●著者からのメッセージ


 二十四縁起に関してこのような本を書くことになるとは思ってもみませんでした。二十四縁起と言うのは普通の人間、普通の僧侶がかかわる分野ではないので、私のような智慧が乏しい輩には関係ないと目を背けてきました。初学者に二十四縁起を解説し習得させる際に齟齬が生じると以後二十四縁起の書籍を手に取ることすらしなくなることがあります。

 親しくしている檀家の皆さんの一部から、二十四縁起の内容、意味を理解したい、そのための本を書いて欲しいという希望が寄せられた時には、タウン町、マハーガンダーヨウンセヤードーが書かれた「二十四縁起の基礎」という本を読むことを勧めるようにしていました。

 その本を読んだことがある檀家さんたちもいましたが、「二十四縁起の基礎」は彼らにとってはレベルが高く、内容を理解できない様子でした。私たちが理解できるような本を書いていただけませんかという要望が多く寄せられるようになりました。そのためフェイスブックに「初学者でも良く分かる二十四縁起」という解説文を掲載することにしました。


 執筆を開始した当初は、「二十四縁起の基礎」をもとにし、その内容を記載すれば難しくないだろうと考えていました。しかしながらいざ執筆してみると「二十四縁起の基礎」を単に転記するだけでは済まない事が分かりました。

 このためレディセヤードーの「パタヌッデータディーパニー」、タウン町マハーガンダ―ヨウンセヤードーの「ティンジャィッバーダーティーカー」、「アチェーピューパタン(二十四縁起の基礎)」、「ウィーティニントンチェッスーバーダーティーカー」、「パターナバーダーティーカー」、パーモゥッカチョゥッセヤードー・ドクター・ナンダマーラウィワンタの「パタンミャッデータナーホーテヤー」などの文献を読みあるいは法話を聞かざるを得ませんでした。

 これらの文献、法話を拠り所、手掛かりとして「子供でも分かる二十四縁起」を疲労困憊しながら執筆しました。執筆をしながら「もういい、執筆を止めよう、難しすぎる、自分の智慧では書くことができない」と落ち込んで執筆が途絶えてしまったこともありました。

 「高名なセヤードー方のこうした文献を頼りとして書けば実現できるだろう、落ち込む理由などあろうか、檀家の皆さんから要望を受け、恩返しとして、執筆を続けて完成させたらどうだ」と自分自身を叱咤激励し、力を振り絞って執筆を続け、憔悴しながらも最後まで書き上げることが出来ました。


 早朝五時に起床し、前日の夜に完成した部分にもう一度目を通し。フェイスブックに掲載しました。それが終わったら他のやるべきことを行い、朝食の供養を受け、午前6時から午前11時まで「アチェーピューパタン(二十四縁起の基礎)」、「ウィーティニントンチェッスーバーダーティーカー」などの文献に目を通しました。午後1時にはパーモゥッカチョゥッセヤードーの「パタンミャッデータナーホーテヤー」という法話のテープを聞きました。法話を聞き終わると30分ほど休みをとり、その後ベランダで歩きながらどのように書いたらアビダンマの基本を全く知らない人たちが理解できるだろうかと考えました。その後は、夜の10時ごろまで考えたり、執筆したり、修正したり、あちこちを歩き回ったりして、目眩が生じることもありました。夜の十一時には寝床に入り、翌朝また5時に起床しました。このように夜明けから日没まで、1カ月以上「子供でも分かる二十四縁起」の執筆を疲労困憊しながら続けました。


 「初学者でもよくわかる二十四縁起」を執筆している間、目眩がしたり、極度に疲労したりしましたが、一つのセクションを書き上げる度に大変な喜びを感じました。自分のこれまでの人生でこれまで得たことがない喜び、ピーティ(喜)を得ることが出来ました。

 著名な大セヤードー方が二十四縁起に関して様々な形で著作を出されているので、この「初学者でもよくわかる二十四縁起」の原稿を出版することは望んでいませんでした。檀家の皆さんの願いをかなえるためにフェイスブックに掲載しただけでした。


 フェイスブックに掲載した「初学者でもよくわかる二十四縁起」を読んだたくさんの檀家の皆さんから法施したいので本として出版することを許可して欲しいとの申し出がありました。また、フェイスブックに掲載した部分を写し取りPDFに変換して配布する許可を下さいとの申し出もありました。

 そして、フェイスブックで「初学者でもよくわかる二十四縁起」を読まれたシュエチン派の総本部長、モゥンユワ町、アロンデッキナーヨゥンセヤードー、バッダンタオータダから「原稿を完結させてください。出版に向けて布施者を募りました」との指示を受けました。こうした背景で単行本として出版することになりました。ですから、アロンデッキナーヨゥンセヤードーも「初学者でもよくわかる二十四縁起」出版の恩人であるセヤードー方のお一人となっています。


 私宛にたくさんの文献をお送りくださった恩ある方々、ご指導をいただいた年長の僧侶の皆様、「初学者でもよくわかる二十四縁起」の書籍化を支援いただいたセヤードー方に書籍版「初学者でもよくわかる二十四縁起」を献上し、敬意を払い、礼拝いたします。 書籍版「初学者でもよくわかる二十四縁起」の原稿を、事実関係、イデオロギーの観点から誤りがないかどうかチェックして下さったアシン・カッタバターラ(タータナダザ、ダンマサリヤ、イナヤダラ、ディーガバーナカ)とピュゥ町、オゥッピャッヤックエ、ゼーヨゥンパリヤッティサーティンダイッから二十四縁起の指導をしていただいたアシンワンニタ(タータナダザ ダンマサリヤ)のお二方も書籍版「初学者でもよくわかる二十四縁起」の恩人、セヤードー方です。装丁に関して助力いただいたクオリティ出版のオーナーであるコーミントゥン、そして出版社の関連部署の皆様にも深く感謝いたします。

 「初学者でもよくわかる二十四縁起」をアビダンマの基本的な知識が全くない人たちが理解できるように、二十四縁起の法を自分の人生に役立てることができるように、自分の体力、自分の智慧を振り絞って努力を重ねて執筆しました。それでも落丁、乱丁、誤りなどがあるかもしれませんが、ご容赦いただき、慈悲を込めた清らかな喜びの心で訂正し読んでいただければ幸いです。書籍版「初学者でもよくわかる二十四縁起」により、智慧を具えた善人たちの心に楽しさと喜びが生じることを祈念いたします。


●二十四縁起について、ご恩になったセヤードー方

 二十四縁起について知りたいと言われると少し気が引けます。私は、他人は不得手で自分は得意なことだけを書いてきました。律蔵、経蔵を主として学んできました。アビダンマ(論蔵)については学校に在籍していた時に教科書で学んだだけです。教科書と言ってもパーリ語で書かれた手引きを用いて、要点を学んだだけです。その本質を学んだわけではありません。それで改めて本を読むという結果に至りました。ミャンマーでは二十四縁起の本質、実践する方法などはレディセヤードーの著作、説法などにより知ることができます。

 レディセヤードーの前の時代は、二十四縁起と言うと断片的な資料に基づいて学ぶしかない状況でした。レディセヤードーが逝去された後、二十四縁起を人々が理解できるように教えたのはタウン町、マハーガンダヨゥンセヤードーです。「二十四縁起の基礎」という本を出版され、法話会も開催されました。檀家たちはそれをテープに録音しました。セヤードーが逝去された後は録音した法話を編纂して本として出版しました。これ以降、多くの方々が二十四縁起を説き、文章にされました。

 上座仏教の信者さんたちは、タウン町マハーガンダ―ヨゥンセヤードーの「二十四縁起の基礎」を読むべきだと思います。繰り返し何度も読むべきです。読んでみてわからない点があれば、よく理解している人に聞いてください。今回、私は二十四縁起とはどのようなものかを皆さんがおおまかに知ることができるように説明します。前菜を味わう程度に解説します。