(1)
★妻と息子夫婦と孫娘が一瞬にして津波に呑まれ、ただ独り生き残ってしまった消防団の老人が泣き崩れた。
 20歳になった孫娘の親友が訪ねてくれたので笑顔で迎えたが、突然、抑えがたく激しく嗚咽した。
 9年の歳月が流れても、悲嘆は癒えないのだ。
 愛する者への執着が深ければ、孤独地獄は耐えがたく、豊かな孤独は至難の業……。
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(2)
★わびしい孤独、物欲しそうな孤独、怒りに満ちた孤独、ひねくれた孤独、哀れな孤独……。
 悠然とした孤独、優しさも信頼も安心も十分に得てきた孤独、豊かな孤独、自己完結した孤独……。
 自らの中に顕わになる法(ダンマ)のみを拠りどころにした孤独……。
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(3)
★欲望を刺激し、怒りのエネルギーでヤル気を駆り立て、バカ騒ぎをしては、この世を楽しむ。
 そんな貪瞋痴の世界に逆らい、孤独に自己を客観視する瞑想修行……。
 物理的な孤独には耐えられても、自分に向き合い続けるのは至難の業だ。
 他人を、外界を、ネットの世界を眺めたい、見物したい、バーチャルな情報の濁流に呑み込まれ、押し流され、溺れたい……。
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(4)
★愛する家族、財産、地位、名誉があれば、反射的に守ろうとして、エゴ的反応が起きやすい。
 家族を持たず、野望も、不満も、守るものも、失うものもなければ、怖れるものがない。
 未だに道を極められないドゥッカ(苦)は続くが、生じてきた優しい気持ちは、不特定多数への慈悲の瞑想に昇華されていく……。
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(5)
★人と交わり集団で生き延びてきた人類は、本能的に孤立や孤独を嫌う。
 しかるに、感染症の猛威に緊急事態宣言が発動し、人流が止められ、巣籠もりせよ、孤立しろ、と強いられてきた。
 起きたことは全て正しいのであれば、出歩かず、自宅に隠棲し、ひたすら瞑想せよ、という天の声と解釈すべきだろうか。
 雨が降ろうが槍が降ろうが、樹の下で、廃屋で、瞑想せよ、群れるな、と説き続けたブッダ・・・。